一夏の夜の夢 - 中編 -


『ハルヒ〜、遅い〜』
「ま、待ってってば;;」
海から帰ってくると、すでに感謝祭の準備が。
鏡夜に言われ、4人は即座に着替えに移った。
男3人は、何時もの学院生活で着慣れているブレザー。もちろん双子は御揃い。
またもや、ハルヒだけが遅い。
「まだなのか、ハルヒ。そろそろ時間だぞ」
「き、着替えてる真っ最中ですっ」
「何?服に迷ってんの?」
「選んであげるから、中に入れてよ?」
「駄目」
『ケチ〜』
「お前等っ、ケチとかどうっていう問題じゃないだろうが!!」
「人のこと言えないクセして〜」
「クセして〜」
先程の事は何事もなかったかのように、表面上は何時も通りの関係を築いておく。
だが、内面は凄まじい。

"僕等は、本気で捕りにかかるから"

この言葉を考えると、何とも言えなくなる。
双子の予想以上に、この言葉は環に響いていた。


「お、おまたせ〜」
ピンクのパーティードレスに、赤いミュール、白いショールを羽織ったハルヒが出てきた。
「おおっ!!」
環の第一声は、喜びそのものだった。
『勿体無い』
双子の第一声は、珍しくも批判的だ。
「折角だから、頭もなんかしろよ」
「化粧もしろよ」
何かを企んでいる様子。
「え、べ、別にいいじゃんっ!」
『僕等に任せろっての♪』
ハルヒ、再び部屋へ。
「お、オイ!双子〜っ!!」
にやり。
笑みを環にプレゼントしてハルヒを連れ込む双子。
環は蚊帳の外だ。


「何かあったの?」
『は』
「ってか、動くな。今、イイトコなんだからっ」
「わ、わかったよ。動かないから;」
「頭も動かすなよ」
「はいはい;」
ハルヒに問われてしまった。
僕等双子を一発で見分けたくらいだからな。鋭い。
内心チクチク戦っている三人だったが、双子達の内心の内心はそんなに乗り気ではなかった。
実は、ただ単に、環を焦らせたりして夏休み最後に遊びたかっただけであった。
ハルヒとは仲良し子吉でいたいし、奪い捕るとかは全然考えていなかった。
『よしっ!出来た!!完成っ!!』
なので、この頭も、化粧も、環に見せつけるためであった。
決してヘンな下心はなかったのだ。
「ハルヒ、頭触ったりすんなよ」
「顔もいじるなよ」
「はいはい。あ、ありがとうね。」
『どう致しまして、行くか』
「うん。」

【がちゃ】

環は待ち暮れていた。
「殿、どう?」
「完璧だよっ?」
『僕等の最高傑作!!』
ハルヒが出てきた。
「!!」
ウイッグを付けてポニーテールに結われてたり、アクセサリーつけてたり、ナチュラルメイクだったり、
とにかくまあ、かなり女の子らしくなっていた。
「ハルヒ〜!!お父さんは幸せだあああああああああああああああ!!」
『殿、触るの禁止!』
と、抱き付こうとしていたので、ストップをかけた。
「な、何でだぁ!!」
「だって、折角の化粧が無駄になっちゃうよ」
「頭も崩れるし」
「あ、そ、そうかぁ・・・・;」
残念がる環と、安心するハルヒ。
そして、何だかんだ思いつつも、こうして環と遊び戦うのも暇つぶしには悪くないかと思う、光と馨。
4人は会場となる、鳳家の中庭に降りることに。



鳳家が御世話になっている企業様が、いっぱい集まっておられた。
「さっすが、鏡夜先輩ん家・・・・」
「うちもデッカイが大違い・・・・」
『でっかい、感謝祭だなぁ・・・・』
珍しく、双子は感謝祭の規模に驚いている。

「鏡夜様、学院生活はどうですの?」
「まあ、悪くはないかな。」
「楽しいですか?」
「最近は、楽しい玩具がいてね」
「そうですの。鏡夜様の御友人本日はこちらに?もし宜しければ教えてくださらない?」
「ああ、一応来ていますよ。御教えしましょうか」
鏡夜は大事な御客様の御姉様方数名のお相手をしていた。

こんなところでホスト部が役にたつのか と、感心するハルヒ。

「ハルヒ、環に、双子も、ちょっと来い」
「何ですか〜?」
『先輩何〜』
「何だい、鏡夜」
いつもなら、母さん と呼ぶであろう環も、現状を見て鏡夜と呼んだ。
「こちらが、友達ですよ」
「まあ、鏡夜様に御似合いの方々ですね」
「いえいえ。」
・・・環にスイッチが入った。
「御姉様方、御初に御目にかかります。鏡夜の友人で同じ部・同じクラスの須王環と申します。」
『双子の、常陸院光と馨です。』
「まあ、素敵な殿方を御友人にお持ちされていて、鏡夜様は幸せですね」
「・・・・そうでもありませんが・・・・・」
「あら、そちらの御嬢様は?」
ハルヒのことだ。
「あ、自分は、鏡夜先輩とは一応」
「もしかして、鏡夜様の許婚ですの!?」
「え?」
『は?』
「!?」
「は、はい?」
御姉様方の言葉に、ホスト部吃驚。
「枝里子さん、全く持って違いますよ。彼女と僕は、部活の先輩後輩ですよ。」
驚いたが、さらりと返す鏡夜。
「あ、そうなのですか。私、驚きましたことよ。鏡夜様にこんな可愛らしい許婚がおらっしゃるのかと・・・」
「ははは。冗談おきついですよ。」



企業様が多くいらしたので、邪魔かと思い、鳳家の客間で夕食にすることにしてもらった4人。
家の中に人は少なく、双子は上着を脱いて、ハルヒはショールをたたんだ。
客間ということもあって、当たり前のように広いが、その広さが馬鹿じゃなかった。
その部屋のど真ん中に位置するテーブル。
テーブルの上には、鳳家が雇っている各国の一流シェフが作った、料理が沢山並んでいた。
ハルヒ・光・馨は、まあ何時ものように双子の間にハルヒを挟んで並んで座って食べていた。
「吃驚した〜」
「ホント。心臓に悪いよ」
「こっちこそ吃驚したよ・・・。鏡夜先輩の許婚とか・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
御決まりの体育座りで部屋の隅で影背負う環。
『殿?』
「先輩?」

余程、許婚失言が心にきたようだ。
そんな環を見て、常陸院の坊ちゃまは遊ぶことにした。
いざ、ハルヒ戦争の幕開け。
「ハルヒ?」
「はい?」
「あーんっ♪」
「!?」
「!!!!!!!!!!!????????????????」
光は自分が一度使ったフォークでハルヒに、レタスをやった。
運良く(悪く?)、環は目撃してしまった。
「あのね、光;」
「何か、ハルヒ見てたらレタスあげたくなっちゃって〜」
「おおおおおおおおおおおおおお、おまおまおまおまおまおま、光っ!!お前〜!!」
「何?殿」
「じ、自分の一度使った物で〜〜〜〜〜〜〜!!嫁入り前の娘っ子に〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
あまりの衝撃に、環は落ち着いてられない。
「別に、ハルヒが殿の所有物じゃないんだから、何しようと勝手じゃん」
「なななな!!だからと言って〜!!ってか、ハルヒ!!お前も違ってるぞ!!」
「別にレタス一枚・・・」
「そこじゃな――――――――――――――――い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

更に、馨までも・・・。
「じゃ、僕も。はい、ハルヒ〜」
「もーっ」
ぱくっ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
環は嘆くしかなかった。
そんな環の姿を見て、心底楽しむ悪趣味な双子。
「そんな、間接っくらい、いいじゃん。人間、人生上何度でも経験するものだよ」
「かと言って、1日に二回も経験するとはどういうことだぁ!!お父さんは許さないぞ!!この悪党二匹め!!」
「どういうことだろうね、殿」
「俺に聞くな!もう、お父さんは知らんぞー!!」
あまりのショックに泣き叫ぶ環。
こんな姿を見て、ひらめいた光。
「ハルヒ」
「何?」
「殿、間接は駄目だってさ・・・」
「は?何言って・・・」

光はハルヒの頬にキスをした。
「一体、何;」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「殿、何驚いてんの?間接じゃないよ」
「ばばばばばばばばばばばば、ばっかもーんっ!!そういう意味ではない!!」
「え〜、テッキリ、間接じゃなくて直接ならいいのかと思いましたよ〜」
「殿、説明不足なんだよぉ〜」
アホアホを演じる光・馨。
「普通意味っくらい解かるだろう!!」
『頬でも駄目だったの?』
「だから、そういう意味では無いっ!!」
「ハルヒ、殿、ほっぺは駄目だってさ。ドコなら許してくれるんだろうね?じゃ、口?」
と、言ってホストっ気満々でハルヒを見つめる馨。
「もうしなくていいから;」
疲れた感じのハルヒ。
「そうだぞ!!何、嫁入り前の俺の娘に〜!!」
「だから先輩の娘じゃないですよ;」
「ハルヒ!!お前のリアクションはトコトン違っているぞ!!!!!!!!!!!!!!!!」
『殿、ウルサーイ』


男3人が騒いでるうちに、ハルヒはトイレに行きたくなったので部屋を出た。



が。

「・・・・・・・・・・・・・・トイレって何所・・・・」
迷子になっていた。
人影も少なく、廊下は、《これが金持ちの家なのか》級に暗い。
鳳家はケチってるなぁ と、何とも失礼なことを思うハルヒであった。

コツッ、コツッ、コツッ。

人気の無い廊下に、響く人の足音・・・・・!
それは前方からしていた。
「誰かそこにいるのか?」
「えっ?」

足音が早くなり、ハルヒに近づいてきた。
「え、ちょっと、なっ」
左手を捕まれた。
誰かとその人物の顔を見ると・・・。

「鏡夜先輩!?」
「何だ、ハルヒか。こんなところでどうしたんだ」
鏡夜だった。 
「あ、ちょっとトイレに行こうかとしたら、迷ってしまい・・・」
「トイレは客間のすぐ横だったはずだが・・・・」
「え・・・・;」
何とも恥ずかしい。
現在地は、客間とは正反対に当たる所。
この暗闇では、またもや迷子になりそうだったので、鏡夜と一緒に客間まで行くことに。


「で、今後の御計画は?」
「あ、減額のですか」
見た目、美男美女のカップル。
会話の内容は、減額について。
何とも言えない・・・。
「もう時間もあまり無いしな。浴衣で終わっとくのか?」
「ええ。コスプレは少々・・・;」
「まあな。喜ぶのは環ぐらいで、双子は止めにかかるだろうからな」
「はあ。まぁ・・・。と、ところで」
「何だ」
思い切って聞く事にした。
「何で浴衣があんなに高かったのですか?」
「ああ、それは」
「?」
「取引先様に、最高級の浴衣を扱ってらっしゃる所があって、そちらに一着頼んだら、その値段だったんだよ」
「ホントに最高級ですね・・・。・・・まさか自分に払えとか言われるわけじゃないっすよね・・・・」
不安がり訊いてみた。
「そんな事、誰が言うと思ったんだ?」
「・・・・・・鏡夜先輩が・・・・・・・・・」
笑われた。
「ははっ。俺はそんなに悪代官か?」
「え、いえいえ;;そんなことはちっとも!!」
素直に、はい と答えたかったが、いいえ と答えておいた。
「ただ単に・・・」
「は?」
「お前が着ればその位の値はあってもいいんじゃないか って思ったからだよ」
「そうですか・・・」
珍しい、鏡夜のハルヒに対するホストっぷり。
ここではホストの面しか見たこと無かったので、ホストとしての冗談と受け止めた。


「ハルヒぃ〜。お父さんが悪かったああああああああああああああああああ」
完全防音の客間から、環の声が漏れていた。
「・・・・あの馬鹿・・・・。幸い、御客様が居られなくて良かったよ・・・」
「・・・・・・環先輩・・・・・。」
飽きれる二人。


【がちゃり】

入りたくなかったが、入らなければ鏡夜に迷惑がかかりそうだったので、入らねばならない状況だったハルヒ。
「・・・・・戻りました・・」
「ハルヒ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!っとっと!」
「え、あ、うわっ!」
扉を開けた瞬間に、環が飛んできて、押し倒された。

・・・・・。

「いたたたっ・・・・・・重っ・・・・・・・だ、誰か上に?」
ハルヒ、吃驚仰天。
「った〜;すまん、滑ってしまった;誰だ?光か、馨か??」
『僕等、何とも無いよ。ってか、ハルヒ大丈夫?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は・・・・・・・ハルヒ!?」
「そうです。早く退いてください。」
ハルヒは上半身を起こしていたので、珍しくもハルヒと環の目線の上下が逆になっていた。
「あ!!わ、悪かったな!!!!!」
「はい。悪いです。」
『殿ったらぁ。まだまだ明るいのに。これから花火もあるってのに。焦ってんの?』
「馬鹿者っ!!俺はなぁ、下心あってこんなことしたんじゃない〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『あ、鏡夜先輩』
「環、静かにしろ」
「鏡夜?!何故、こんなところに!!」
イキナリ現れた鏡夜に驚く環。

「自宅に居て何が悪い・・・;」
「あ、いやいや。取引先様の御嬢様方の御相手でもしていたのかと思ってたよ」
「とっくに終わったよ。」
「鏡夜先輩、何かあったんすか?」
馨が聞いた。
「これから中庭で一曲あるんだよ。お前等も呼んだ方が言いかと思ってな。」
「しゃ、社交ダンス・・・ワルツですか・・・・?」
苦い想い出のあるハルヒ。
「その他に一体、何を踊るってんだ?ソーラン節か?」
「い、いえ・・・・・;」


「ところで、男三人に、ハルヒ一人で、どうするんですか?」
素朴な疑問を光がぶつけた。
「一人とハルヒはそれで踊ればいい。残り二人には御嬢様方の相手を頼む。」
『はーい。じゃ、決め方は・・・』
「それは、お前等で考えろ。あ、踊り終わった後、一時間後ぐらいから花火だからな。」
『はーい。』
「日中お前等が遊んでいたビーチから打ち上げるから、裏手にある神社で見るのが一番いい眺めだと思うぞ」
鏡夜、退室。


「で、どーやって決めるの?」
「ここは公平にじゃんけんなどでいいんじゃないか?」
『庶民臭い』
「・・・失礼な・・・・;」
決め方が決まらない。
「あ、でも・・・」
「?」
ハルヒは思い出した。
「自分、男の踊りしか出来ません・・・・;」
暫し考える、ホスト部部員。
答え発見。
『そんなの、気にするな!』
「ダンスは、流れに乗っていけば上手く踊れるものだよ!心配するな!ハルヒ!!」
・・・・・呆気無く、踊らされることになったハルヒ。

結局、振り出しに戻り、決め方を考える部員達。
「この際、」
光が言い出した。
「ハルヒ、選びなよ」
「は!?」
「誰と踊りたいか、選びなよ?」
「それだ。ハルヒの意思が一番だよ。光、冴えてる〜」
ハッキリ言って、自分等が決め方を考えるのが面倒臭くなっただけの双子の思いつき。
「え、ちょ、はぁ!?た、環先輩〜っ」
「俺も同感だ。」
「え!!」
唯一反対するだろうと、ハルヒの中で思われていた環も、賛成した。
『え?じゃあ、誰とでもいいの?』
「え、で、でも、そういう訳でもないし・・・・・・・;;」
「とにかく、選びなよ」
「誰も怒ったりしないから」
「どんな答えでもいいぞ・・・」
「え・・・・・・で・・・・・でも・・・・・」
『この3人の、』
「誰がいいんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
戸惑うハルヒ。
ただ、答えを待つ3人。
3人と目を合わせられない。目を逸らしてしまう。
ハルヒの本当の答えを聞きたい3人。今はただ待つだけ・・・。









結局、ハルヒが出した答えは・・・。





♪〜・・・・

中庭からは優雅なワルツが聴こえて来る。
始まったようだ。
辺りは静か。

一時の、魔法がかかったようだ。

先程、鳳家スタッフが料理を下げに来たので、テーブルの上はすっきりしている。
ダンス中は、部屋の明かりは消されることになっていて、月光を浴びる客間の二人。
「これで良かったのか・・・・」
「ええ・・・」
室内にはハルヒと環が。
ハルヒは窓辺に寄り掛かって、環はテーブルの椅子に座っていた。距離を置いて居た。



中庭では・・・。
光・馨は鏡夜が言っていたよう、御嬢様方と踊っていた。


ハニー先輩と、モリ先輩の姿も見える。




「何か、靴、慣れなかったもんで・・・・。ミュールなんて、滅多に履かなくて・・・・ちょっと足、疲れてしまって・・・・」
「そうか・・・・・・・・・」
なら、ハルヒ一人で居たいだろうに・・・、
「どうして俺を・・・・?」
何故ハルヒが、光と馨は踊らせに行って、自分だけは残したのか・・・。
まさかハルヒが好き好んで自分を指名してくるなんて考えられなかったので訊いてみた。
「先輩と、話がしたくて」
やはり、待ち望んだ返事ではなかった。
でも、光・馨の手の内に置かれなかったことに、安心した。
何とも言えぬ雰囲気。
決して流されるような雰囲気ではなかったが。
「先輩・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何だ・・・」
何時もと変わらない平常っぷりを演じ見せる。
だが内心は・・・・。


ハルヒが言った。

「・・・・・・・・双子と、何かあったんですか?」
ここへきてまでも、話題が双子とは悲しい。
「・・・・何故?」
「・・・・・・・・・いや、何か、いつもと違うな・・・・って・・・・何となく・・・・思い違いなら良いんですが・・・・・・」
鋭い。
この阿呆部の中で、一番冴えてて一番鋭い者かも知れない。
だが、お前を懸けて勝負している(?)なんて、言える訳が無い。
「・・・ハルヒ、お前が首を突っ込むようなことではないよ・・・・・・・・・・・・・・」
「そうですか・・・・・・・。なら良いんです・・・・・・・・・・・・・・」
話題があったものの。
終わってしまい、ハルヒは黙る・・・。

まだワルツは流れている。

♪〜・・・♪〜〜


ハルヒは窓の外を眺めている。


月光に照らされる顔は、日中よりも美しさが増している。



イヤリングが月光で照らされて、光る。



焦りが募っているのか、それとも・・・・・。他の何かなのか・・・・・・。



【かたんっ】
何を想ったか、環は席を立った。
そして、歩み寄る。
「ハルヒ」
「・・・・・・・・・はい?」
振り向いた。

環が立っていた。
「何・・・・・・ですか・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
見詰め合う。
その距離、およそ1m。

不思議がるハルヒに、言い出せない環。



〜♪


ワルツが終わった。


部屋の明かりが点いた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」










【かちゃりっ】



「!」
「!」
ドアが開いた。
「何してんの?」
「殿とハルヒ。」
終わったらしく、光・馨が帰ってきた。
二人、窓辺に居たのを不思議がる。
「あ、別に、何も・・・・・」
「うん。何も・・・・・無いよ・・・・・・」


魔法は、解けてしまった。



「鏡夜先輩が、花火だから仕度しろってさ」
「あ、うん。」
「一時間、時間あるから着替えて、一階のダンスフロアに一旦集合だって」
「う、うん・・・・。」
鏡夜からの伝言も、マトモに聞いてはいないハルヒだった。
環が何を言おうとしたのか。
気になって仕方が無い。



「じゃあ、また、あとで・・・・」
『じゃーねー』
「じゃあな・・・・・」
環も心なしか沈んでいるように見えた。
・・・・・言えなかったからだろうか・・・・・。
4人の中で一番早く地を後にした。

「殿、どうしちゃった訳?」
「ハルヒ、何か知ってる?」
・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・知らない・・・・。じゃあ、また・・・・・」


『へーんなの』
二人の態度が凄く気になる双子。
だが、触れてはいけない気がしたので、何も触れずに行った。
「どうしたんだろうね、殿とハルヒ」
「ねー、光。」
「とにかく、部屋戻ろっか。」
「うん。」
双子も部屋へ戻っていく。









なんだったんだろう・・・。先輩・・・。
やっぱり、何か何時もと違う感じがしてた・・・・。

着替えながら、こんなことをふと思っていた。

「どうなさいました?」
ハルヒは鳳家のスタッフの中で、浴衣の着付けを出来る、暁さんを部屋に呼んでいた。
「あ、ちょっと、連れの様子が可笑しかったもので・・・」
「もう、夏も終わりですからね・・・。その方、何を想われていたんでしょうね。」
「ええ・・・・・・。」



「はい、出来ましたよ」
着付けのみならず、化粧や髪型も色々としてくれた。
白地に金魚柄、黄色の帯の浴衣と、下駄。
涼しげな軽い化粧に、またもやウイッグを付けられ御団子に。
「暁さん、色々と有難う御座いました」
「いいえいいえ。これからも、御坊ちゃんと宜しくお願いしますね。」
「え・・ええっ」


暁さんが部屋を出ると、
「あら・・・・・」

【かちゃりっ】

「ハルヒさん、」
「はい?」
ハルヒは部屋を出ようとしていたらしく、ドアの近くにいた。
「常陸院様が御待ちですよ」
「ハルヒ〜、まだ〜」
「暁さんのお陰で準備済んでるよ。」




環はいなかった。

「・・・・先輩は?」
「あ、殿?先に行くってさ」
「ふーん・・・・・・・」
「ホントに何にも無かったの?」
「あ、うん・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



微妙な仲のまま、時は近付いてくる・・・。



   後編→
author : 衣月円さん

Comment(中編)
ちょっとばかし、補足しておきます〜(わかってらっしゃると思ってますが;)
最初の方の、”学園生活で着慣れているブレザー”ってのは、制服じゃなくてブレザーが着慣れているってことです。
うーん・・・。何かストーリー、深刻になってます・・・・・;
前編はプロローグ、中編は双子、後編は環 と言った感じで一応構成しております^^;
ハニー先輩とモリ先輩、あまり出せなくてFANの方々済みません<(_ _)>

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