嵐の前に



「こんちはーっ、てまだ誰も来てないの?」

「おぉ!一番乗りだぞ、ハルヒ!」

「本当だ、珍しいね」

放課後。

ハルヒ達1−A組は、珍しく三人揃って第三音楽室まで来ていた。

音楽室には、いつも早くにいる先輩達の姿は無く、

ハルヒ達しか来ていなかった。

「ふぅ、それにしても凄い降りだな」

光がどっかりとソファに座り込み、窓の外を見て言う。

今は台風の季節で、今日の夜にも台風上陸と予想されていた。

「だなぁ、おい!ハルヒ、そんなのいいからこっち来いよ」

光の隣に座り、馨がお茶の用意をしているハルヒを手招く。

ハルヒは呆れたように溜息をついて言った。

「もう、二人共。先輩が来たら怒られるよ?」

「いーの、いーの」

「遊んでようぜー」

双子はごろごろとソファでくつろぎ状態。

ハルヒは仕方なく、一人で開店前の準備をする事にした。

しばらく音楽室には、カチャカチャというカップの音だけが響く。

ハルヒに相手をしてもらえない双子達は、ソファの上でつまらなそうに

ごろごろとじゃれ合っていた。

「ハルヒー、僕らもお茶飲みたい」

「こっち来て、一緒に飲もうぜー」

ハルヒは、また我侭を言う二人に文句を言おうとソファの傍に

歩いて行こうとした。

「ちょっと、二人共―・・ってわぁ!」

いきなりハルヒが叫び、次々とガシャンという音が聞こえる。

「ハルヒ!どうした!?」

「大丈夫か!?」

双子は慌ててソファから降りると、ハルヒの傍に駆け寄った。

「あいたたた・・・」

ハルヒはこけてしまったらしく、辺りの床には割れたカップの破片が

散乱していた。

「うわ、大丈夫か?」

「欠片踏むなよ、ホラ」

双子はハルヒの手を取って、助け起こすと欠片を片付け始めた。

「あ、二人共いいよ。自分が割ったんだし・・・」

ハルヒは慌てて二人を退かそうとする。

「いいから、危ないからどいてろよ」

「それにしても景気良く割れたなー・・ってコレなんだ?」

馨が見下ろす方には、何やら豪華な箱が置いてあった。

さっきの事故で、お茶が飛び跳ねている。

「あ、それ。さっき、それに躓いてこけたんだよ」

ハルヒが光の後ろから箱を覗き込んで言う。

すると二人は険しい顔をして箱を睨み付ける。

「マジかよ、何コレ。殿の私物箱?」

「危ないなぁ、こんなトコに置いとくなっての」

馨が不機嫌そうに箱を蹴ると、箱はガタッという音と共に

中身を撒き散らして倒れた。

「わわ!開いてたのかよ!」

三人は慌てて中身を拾いにかかった。

「たく、殿もちゃんと閉めとけって・・・?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

その箱の中身を見た三人はしばし呆然とした。

ようやく声が出た時には三人の顔は真っ青だった。

「何だコレ・・・・・・」

「殿のじゃ・・ないよな・・?」

「何でこんなモノが・・・?」

箱の中にはすごい量の写真が詰まっていた。

それもホスト部の部員のポラだ。

どう見ても隠し撮りとしか思えないものばかり。

こんな事をしそうな人といえば一人しかいない。

(((鏡夜先輩!)))

「鏡夜先輩・・・。まだこんなの撮ってたんだ・・・」

光が写真をつまみ上げながら言う。

「・・・てゆーかさ、どうやって撮ってんの?こんなの」

馨も恐ろしそうに言う。

写真の中には授業中など学校での写真のほか、

なぜか家でのプライベートタイムの写真まである。

「これ・・・、犯罪だよね?」

ハルヒはもう、呆れるを通り越して恐怖を感じていた。

写真は隠し撮りといっても見事なもので、

女生徒がいかにも喜びそうな所を絶好のアングルで捕らえている。

「うわ、コレ見ろよ。着替え撮られてるぜ!」

「殿の写真、全部カメラ目線だぜ?何で?」

「・・・なんか、身に覚えの無い写真まで混ざってるんだけど・・・?」

三人はしばらく箱の中の写真を漁っていた。

すると光が箱の底から、一冊の本をつまみ出してきた。

「?・・何だコレ・・・?」

「あ!それ!」

光が発見した本は、れんげ嬢制作の同人誌だった。

本の表紙は可愛らしいピンク色で、ハルヒの似顔絵が書いてある。

「前、れんげちゃんが持ってたよ。なんか一冊もらった」

ハルヒが言うと、双子は恐ろしげに肩をすくめた。

「なんでそんな物、鏡夜先輩が持ってんの?」

「うわ、いっぱいあるなー」

馨が箱の底を漁っていると、一枚の紙が出てきた。

「・・・・・コレ・・・」

馨が紙を見て固まったのを見て、

なんだなんだと光とハルヒも紙を覗き込んだ。

   先月の売り上げ

・同人誌 二十万円
・部員ポラ 五十万円
・ビデオ 三十万円
・写真集 二十五万円

約束通り、売り上げの三分の二は、そちら様
に回しておきます。

P・S
鏡夜様のご協力のおかげで、この頃の売り上げ
は大盛況ですわ。
後、部員ポラ売り切れ続出ですので新作お願いしますね。
これからもよろしくお願いしますわ。

宝積寺れんげ



「「「・・・・・・・」」」


何これ!?

三人はショックのあまり固まった。

「・・・鏡夜先輩」

「裏でれんげちゃんと手ぇ、結んでたんだな」

「・・・・・・・・」

恐ろしくなった三人は、いそいそと写真を片付け始めた。



「あ〜、しかし吃驚したな」

光が疲れた様子でソファに寝転んで言う。

「ああ、鏡夜先輩がいろいろやってる事はなんとなく知ってたけどさ。

 まさかあそこまで・・・」

馨も恐ろしそうに同意する。

「ハァ・・・。疲れた・・・」

ハルヒは憔悴しきった様子でぐったりとしている。

実は双子に逃げないようにとしっかりと膝にかかえられているのだが。

その必要も無くハルヒは大人しくしていた。

「なぁ」

光が切り出した。

「「ん?」」

「鏡夜先輩って一体何なんだろうな」

光が放った言葉にハルヒは、はぁ?と返事を返した。

「何って・・・、人間?」

「違う、違う。そう言う事じゃなくってさ」

さすが双子で、光の考えている事が分かった馨は、ハルヒに指を振る。

「?・・じゃあ、どういうことなの?」

聞き返すハルヒに光が説明をする。

「だってさ、殿とかハニー先輩とかモリ先輩とかだったら

ある程度考えてること分かるじゃん?」

「分かんないよ」

ハルヒの即答に二人は呆れる。

「・・・・まぁ、確かに分かんないけどさ」

「・・・んじゃあ例えばさ。

野原に一人でいる時に、犬が追ってきました。さて、あなたならどうします?」

「・・・・・・そりゃ、逃げたら追ってくるし、そのままじっとしてる」

ハルヒの答えに双子は満足そうに頷く。

「そういうと思った。殿なら・・・・、考えなしにまず逃げるよな」

「ハニー先輩なら友好を求めそうだし、モリ先輩も別に逃げないだろうな」

「・・・・それがどうしたの?」

不思議そうに聞き返すハルヒにちっちっ、と二人は指を振る。

「ここからが問題さ、じゃあそれならさ」

「鏡夜先輩ならどうすると思う?」

二人の息の合った質問にハルヒはしばらく考え込む。

「・・・・・・鏡夜先輩はまず犬に追いかけられたりしないと思う」

「「・・・・だよな」」

「・・・・まずそれに鏡夜先輩は一人で野原なんかに行かないと思う」

「「・・・・だな」」

ハルヒのもっともな意見に二人は黙り込む。

「だから、そういうのじゃ駄目だ!」

馨がいきなり叫ぶ。ハルヒにはわけが分からない。

「もう、別に分かんなくていいんじゃない?」

ハルヒは言ったが、双子はブツブツ言っている。

「あれ?」

ふとハルヒは何かを発見した。

「わ、どしたハルヒ?」

光が膝から降りて行ったハルヒに声を掛ける。

「あ、さっき拾い忘れたやつか?」

双子はハルヒがしゃがみ込んでいる方に近づいていって、言った。

ハルヒが拾ったのは分厚いファイルだった。

「ねえ、二人共。コレ・・・・」

二人はハルヒが指差す所を見た。

『桜蘭ホスト部員 データファイル』

「「ッ!!」」

二人は驚いて固まったが、すぐに次の瞬間

せき込んでいった。

「ハルヒ!ちょっと、見てみようぜ!!」

「えッ、で、でも・・・」

躊躇するハルヒからファイルを奪おうと馨が言う。

「いいじゃん!ばれないって!ちょっとだけ!」

その言葉にハルヒの好奇心が騒ぐ。

「そ、そうかな・・・?」

一体どんなことが記されているのか、

怖いが見てみたい。

「じゃあ、開けるぞ・・・?」

中には、細かいワープロの文字で

部員のプロフィールが書き込んであった。

「おい、ちょっと待てよ」

「どしたの、光」

ハルヒの質問に馨が答える。

「これって鏡夜先輩のデータも載ってんのかな?」

「!」

とたんに二人の目の色が変わった。

「ホラ!めくれ、めくれ!」

「くそ!どこだ、どこだ?」

「ここだよ」

「「えっ?」」

三人が、後ろから聞こえてきた声に振り向くと、

にっこり笑った鏡夜の姿。

「楽しそうだな?お前ら。ついでに言うと、俺のデータは勿論、

 他の所に移してあるが?」


「えっと・・・・。これは・・・」

「何というかですねぇ・・・」

「・・・・・・・・・・」

黙り込む三人に、鏡夜はますますにっこりと笑いかける。

顔から冷や汗が落ちるのを三人は感じた。


静まり返った音楽室には、窓を打つ雨の音だけが響く。

嵐の前の静けさ。

台風上陸はもうすぐだ。


   - 終 -
author : どらどらさん

Comment
・・・・。
鏡夜先輩の話を書こうとしたのですが・・。
・・・?
よく分からない仕上がりですね・・。
すいません・・・。
毒にも薬にもならないというか・・・。
しょうもないですね。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送