花と、星と、天使と、



午後七時。
藤岡ハルヒは桜蘭高校の正門を飛び出し最寄りの駅までひたすら走った。

テスト期間なので部活は二時間前に終わっていたのだが図書室で勉強していた。
よほど夢中になっていたのだろう気がつけば七時十分前。窓の外は闇の世界に変わりつつあった。

(失敗した・・・)

学校から家まで電車で約一時間ほど。

父親が家にいるということはないかもしれないが今日は金曜日。
週末と夕飯の材料を買わなければならないから早くても家に着くのは九時ぐらいになるだろう。

夜の街を見るのはもしかしたら初めてかもしれない。
普段は目もやらないきらびやかな空気に何故か見入ってしまう。

それは普段の生活もそうかもしれない。
何事にも淡泊な自分は煌びやかなことを含め派手なことには興味がなかった。
どちらかというと苦手だったかもしれない。
そういうことを好んでする人たちを多少軽蔑の目で見ていたと言うことは嘘とはいえない。

だけど、ホスト部という人たちと出会って、その人達と触れて、時をともに過ごして

自分の中で何かが崩れていくのを感じた。
特に、あの人と関わるたびに。

須王 環

自分のことを一番気にかけてくれている人。
どこか抜けていて、時々冷たい目で見てしまうことの方が多いけれど時々、真剣な顔をする。
紫の瞳を伏せて整った顔を少しゆがめて、考え込む。
何を考えているかは想像することはできないけれど、ハルヒにとって環に向ける唯一の
“お気に入り”の顔。
お気に入りではすまされない、“好き”という甘くて、どこか残酷な響きを持っている言葉。

自分が彼に抱いている感情は一体どれなのだろう・・?

「ハルヒ?」

帰省でざわめく駅の構内で自分を呼ぶ声がした。
低く、独特の深みを持った甘い声が。

まさか

高ぶる感情を抑え声のした方を振り仰ぐ。

「・・先輩・・?」

彼だった。
今自分をもっとも惑わせる存在。

今は、逢いたくなかった

「こんなに遅くまで・・どうした?」

ラフな格好。
貴族の家柄だとは言われてみるまでわからない服装だが雰囲気が違っていた。
彼の周りだけ何かが違っていた。
だけど自分は何処に出もいるフツウの高校生で。

釣り合っているのだろうか?

時々、不安になる。

普段はフツウに接しているけれどこういうときに深く考え込んでしまう自分がにくい。

彼を自分はただの先輩後輩なだけなのに・・・

「図書室で勉強を・・・先輩こそ何故、ここに?」

「ちょっと用ができてな。この通りお供もなしでお出かけというわけだ」

肩をすくませて苦笑する。
妙に似合っているその仕草。

どこかが違う・・

「途中まで一緒に行くか?」

特に断る理由もないので頷いた。
それを見た環は満足そうに微笑むとそっと自分の手を握った。

「乗り遅れる」

驚き、動けなくなったハルヒにそう言うとゆっくりと歩き出す。
ハルヒもまた、つられるように歩きだした。

「・・電車はよく乗るんですか・・?」

「いや・・、半年に二回程度・・かな・・?」

満員電車の中、ハルヒは壁にもたれかかり、環は目の前のつり革に手をかけて、
向かい合うようにして二人はしゃべっていた。

他愛のない会話

その中にも自分と彼との違いがしっかりと組み込まれていることが悔しくてならなかった。

もっと近づきたい。
彼と両立するように人になりたい。

でも、それを“好き”というのだろうか?
恋愛感情を抱いたことのない16年間。
まったく、わからなかった。

「あぶなっ!!」

その声にふっと顔を上げると電車がぐらついたのか、人の波に押されて環が自分に向かって来る。

「っ・・!!」

目の前には広い肩があった。
耳に金色の髪と息づかいを感じる
頭には、乾いた大きな手。

一瞬、何が起きたか全然わからなかった。
だけど、物事の全てがわかったとき、ハルヒの顔が真っ赤に染まった。

環が自分に覆い被さっているのだ。
人に押されて

彼の背中に手を伸ばし、服を掴む。

「・・・ハルヒ・・?」

「・・・もう少し・・・このままでいてください」

体温が心地良かった。
離れたくなかった。

何故かはわかなかったけれど少なくとも自分はこの人に惹かれているのは確かだったから。

「・・・あぁ・・・」

短い答えとともに背中に腕を回され、抱きしめられる。

短い時間が永遠に感じられた。

いつかは伝えたい
この気持ちを
単語にするには難しいけれど

いつか、伝えよう・・


   - 終 -
author : 切符久遠さん

Comment
ごめんなさい・・
「桜蘭廓」入ったぜ記念の環×ハルヒのハルヒ視点でした。
どうしてこんなに不器用な二人しかかけないのだろう・・
砂吐くほどラブラブでほのぼの描きたいのにー!!
まぁ・・原作ではハルヒがあんな感じですからねぇ・・
どうなっても環の一方通行になるんでしょうねぇ・・
で、ハルヒにも環を思ってもらおうと想ったのですが
無理でした、ごめんなさい。どっちだよ・・・お前・・
でも桜ホスで環ハルは描いていて本当に楽しいので飽きませんね〜v


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