放課後の第三音楽室。

今日の接客も終わり、部員は一服中だ。




お願いだから


「「ハールヒー、何読んでんの?」」

双子が、ソファで本を読んでいるハルヒに近付いていき、

上から本を覗き込む。

「・・・・・・犬神家の一族(暗いんだけど)」

「ふーん、ハルヒそういうの好きなの?」

「いや、別に。家にあったから」

「あ!それ、僕も読んだことあるぜー」

「え、馨がかー?」

「うん、それちょっと古いけど、面白かったぜ。特にラストでさー・・・・(延々とネタバレ)」

「・・・・・・・・・・・・・・・(まだ、読んでるんだけどな)」


お願いだから。

誰か、自分を一人にしてくれませんか?




「こら、お前ら。やめんか!」

ハルヒの邪魔をする双子達を見かね、環が声を掛ける。

すると、二人は不服そうな顔をし、ハルヒにまとわり付く。

「なーんで、殿に怒られなきゃいけないのさ」

「僕ら、何にもしてないしー」

「なッッ!?思いっきり、邪魔しとるだろうが!それより、お前ら離れんか!!」

「邪魔なんかしってますぇーん(ぎゅうぎゅう)」

「むしろ、殿邪魔。あっち行ってよー(シッシッ)」

「(どっちも邪魔・・・・・・)」


お願いだから。

あんまり仲良くしないでくれよ。





傍で騒いでいる三人に、うんざりしたハルヒが読書をやめようか、と思ったその時。

ひょい

突然、ふわりと体が持ち上げられた。

「ッ!?モリ先輩?」

「・・・・・・・・・・」

モリは、ハルヒに向かってふわりと笑って見せると、

すとんと奥の棚の傍でハルヒを降ろした。

「えへへ、ハルちゃん。一緒におやつ食べよう!」

下の方から聞こえてきた声に気づき見下ろすと、ハニー先輩が、ハルヒの制服の袖を掴んでいた。

「え、あ、はい」

高校生とは思えないような可愛らしい顔で微笑まれると、自然とこっちも笑顔になる。

「じゃあ、僕とって来るね」

すると、ハニー先輩は椅子に登り、棚の上の方にあるお菓子に手を伸ばした。

危なっかしいその様子に、見かねてハルヒが手を貸そうとすると、

案の定、次の瞬間、椅子がぐらりと揺れ、ハニー先輩の体は大きく傾いていた。

「わぁっ!」

ぱしっ

聞こえてくるであろう、大きな音にハルヒが咄嗟に目を瞑ったが

ハニー先輩は倒れてこなかったらしく、ハルヒは目を開いた。

「・・・・・・?」

見ると、モリが間一髪の所で、ハニー先輩の体を支えていた。

「えへへ、崇。ありがと〜」

ハニー先輩が呑気に笑うと、モリ先輩がほっとした様子で溜息をついた。


お願いだから。

無茶だけはやめてくれ。




「あーッ、ハルヒいいなー。僕らにもちょうだい」

「はい、あーん」

「え?な、なんで・・・・・・」

当然と言った様子で口を開けてくる双子に、ハルヒは仕方なく、

ケーキを口に入れてやった。

「ッ!!!!!」

その様子を見ていた環が、怒って双子を怒鳴る。

「ッ!!!お、お前らぁ!!!」

すると、双子が面白がって環をからかい始めた。

「あー、美味い。殿も欲しい?」

「ハルヒー、もう一口ー」

ついに切れた環が、双子を追い掛け回し始めた。

広い音楽室をドタバタと走り回る。

「殿ー、おっそーい」

「こっちまでおいでー」

茶化す双子に、怒った環がスピードを上げる。

さすがはホスト部キング。あっという間に追いついたはいいが、

急には止まれず、そのまま双子と一緒にテーブルに倒れこんでしまった。

ガッシャーン

無情にも、音楽室にはカップの割れる音が響く。

慌てて駆け寄ってきたハルヒは、その光景を見て青ざめた。

「それ・・・・・。鏡夜先輩が今日、持ってきた奴ですよね・・・・?」

その言葉に、三人の顔から血の色が引く。

「・・・あ〜あ。殿、やっちゃったぁ・・・」

「ぼ、僕ら知らないもんね・・・・」

「待てッ!お前ら逃げる気か!?」

環の言葉も聞かず、走り出そうとした双子だが、誰かにぶつかり

それはならなかった。

「「き、鏡夜先輩・・・・・・」」

「ヒィッ!き、鏡夜・・・・・・!」

三人は泣きそうな顔をする。

「お前ら、部屋で走り回るのは止めろと言ったはずだろう?」

鏡夜は笑顔で、しかし恐ろしい迫力で、そう言ってのける。


お願いだから。

俺には負担が掛からないようにしてくれよ?




「あぁーーーーッ!!」

鏡夜のダークオーラで、しばし凍りついていた音楽室内に、

今度は悲壮な声が響く。

見ると、ハニー先輩が無残な姿をしたうさちゃんを抱きかかえて、

泣きそうな顔をしている。

どうやら、さっき割れたカップのお茶が染み付いてしまったらしい。

その事に気付いた三人は、ますます顔を青くする。

「僕のうさちゃん・・・・・・」

ぐしぐしと、うさちゃんに、顔を埋めて泣いていたハニー先輩だったが、

次の瞬間には、ものすごい形相で三人の方を見ていた。

慌ててモリがフォローに入るが、相当ご立腹の様子。


お願いだから。

僕を怒らせないでよね?





しばらく音楽室には、環の泣き叫ぶ声やら、

双子の走り回る音が聞こえていた。

ハルヒは遠巻きにそれを見守っていたが、呆れてもう帰ることにした。

「それじゃ、失礼します・・・・・・」

気付かれないようにそろそろと歩き、こっそり扉を開けるも、

目ざとい双子に見つかってしまった。

「「ハールヒッ!」」

「わッ!」

後ろから声を掛けられ、大きい声を出してしまったが、すぐに辺りを見回すと、口の前に人差し指を立てる。

すると、双子はいくぶん声をひそめてハルヒに話しかけた。

「ハールヒ、何処行くの?」

「え、いや、もう帰ろうかと・・・・・・」

「ふうん、じゃあ僕らも一緒に行くか」

「えっ!?」

「そうだな、もう今日はそうしよう」

「じゃぁ、ハルヒ行こうぜ!」

ハルヒの返事を聞く間もなく、双子はハルヒの腕を取って、

颯爽と歩き出す。



お願いだから。

じっとしてろよ。

僕らを置いて行っちゃわないでよ?





「「それでは、僕ら帰りまーす!!」」

音楽室を出る際、双子が大きな声を出したものだから、

皆がこちらに気が付いてしまった。

「ち、ちょっと・・・・・・」

ハルヒが慌てると案の定、次々と声が飛んできた。

「こらぁ!お前ら、逃げる気か!? てか、ハルヒを離せ!!」

「お前ら、帰る前にきちんと話をつけるべきだろう?」

「僕のうさちゃん・・・・」

「・・・・・・(オロオロ)」

慌てて帰ろうとしたハルヒだったが、双子の道連れにされ

それも適わず。

ただ、あの運命の日を呪わずにはいられなかった。




神様。

どうか、どうかお願いですから。

この忙しい日々にしばしの休息を。



   - 終 -
author : どらどらさん

Comment ・・・・意味わかんないですね。
このタイトルで三つぐらい話を考えていたのですが、
これに収まってしまいました。
色々と考えていたら、大して中身のない話になってしまいました〜。
スイマセン;


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