だって貴方はいつだって私を見るでしょう?

だって貴方はいつだって私を追うでしょう?

だって貴方は、









かえりみち









「はぁ………」

 特に理由もなく、溜息をつく。
 藤岡ハルヒは、ほとほと疲れ果てた顔をしてわずかな夕日の差す帰り道を歩いていた。
ホスト部という何とも変な部で、"女"のくせに"女性のお客様"の相手をするのには大分慣れた。
ただ、"彼"には未だ慣れぬままである。

「…先輩、何がしたいんですか?」

 ハルヒは急に立ち止まったかと思うと、後ろをゆっくりと振り返って言った。
その表情は、呆れている…というよりも、仕方無い、といった表情をしている。
 ハルヒの視線の先には一本の電柱が聳え立っていた。特に変わりは無い。
するとその陰から何やら聞き慣れた声がして、焦りながら早口でまくし立てた。

「なっ…なんのことかなハルヒ…くん!!僕は電柱さ!!ただの電柱、そうただの電柱だよ!!
 君は…そうだ、僕の陰に桜蘭高校ホスト部キングが隠れていると思ったようだが、
 それは違うね!!彼は君のように貧民ではないから今日も車で帰っ……」
「見えてます、足が」

 ハルヒは"普通の電柱"の必死の弁明を一刀両断し、何とか電柱の陰に隠れようとしている
ホスト部キング、須王環の元へ近寄った。

「先輩、どうしたんです?」

 環はなおも電柱に隠れて電柱ごっこを続けようとしている。
 しかしハルヒに見つめられると電柱から離れて、もう降参だ、とでも言うように
肩で溜息をついた。

「どうしたというか、なぁ……」
「どうしたというか、何なんです?」
「車に乗ろうとしたら、ハルヒを見つけてねっ。この際一緒に帰ろうかと!!」
「…一緒に帰ってないし…というか、ストーカー行為では……」
「まぁ、ホスト部キングの須王環と一緒に帰れるだなんて、こんな光栄なことは
 普通の一般女子なら有り得ないだろうけどねっ……!!」

 …何だか、何だろうこの周りに飛び散るキラキラは……。
 ハルヒは軽く溜息をつきながら苦笑して、

「…じゃあ、一緒に帰りますか?」
「…え?」
「歩いて、駅の手前くらいまで。そこまでは一緒の道でしょう?」
「あ、あぁ……っ」

 ハルヒがにっこりと笑う。とても優しく。
 そして環は、ただ顔が赤らんでいく。







 だって貴方は、いつだって私を追ってくれるでしょう?

 だって私は、いつだって貴方を見ていたいと思うんです。








「あ、変なことしたらブッ飛ばしますからね」

 2人で歩き出した矢先、ハルヒが言う。
 すると環は一瞬『えぇえ〜〜?』といった表情をつくったが、すぐに目一杯の
笑顔をつくって、

「変じゃなければ、良いんだろう?」

 と、ハルヒに向かって言った。
 ハルヒは環を見上げて、

「はい?………ひゃっ…」

 突然、ハルヒの左手に何かが触れた。暖かくて、自分よりも大きな……、

「手、繋ぐくらいなら?」

 ハルヒはあいている右手で、だんだんと赤みを増す自分の頬に触れる。
 熱い。
 隣りからは、いつも香ってくる良い匂いがする。








帰り道。
他愛も無い話をしただとか、お互い手が熱かっただとか、沈黙が気まずいとか。
そんなことなんかよりも、貴方が真っ直ぐ私を見てくれるから。






ねえ 貴方は、いつも真っ直ぐ私を見るでしょう?



   - 終 -
author : 水希舞羽さん

Comment
は、初投稿&初書きタマハルです…。如何だったでしょうか。
すみませんまだ未熟でして…(汗)もう何だか色々な妄想が繰り広げられる中、
こんな短編書いてみました。ええ。初々しく手を繋がせたかったのですー。
最初の詩っぽいのの続き、皆様のご想像にお任せ致します(*´∀`*)


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