「…どういう事!?」

目が醒めると、そこは爽やかな風が通り抜ける、草原のど真ん中でした。


不思議の国・狂想曲 前編


 桜蘭高校1年の特待生、藤岡ハルヒはまだ醒め切らないアタマで、辺りを見回す。
(えっと〜。確か、部活へ行く前に図書館で調べモノをしていて…。その途中でうっかり眠ってしまったトコロまでは、覚えているんだけどなぁ〜)
それなのに、外にいるのはどういう事だろう?しかも、ここは学園の中ではなく、どこか知らない場所のようである。
冷静に考えようとするハルヒを、もう1つの驚愕が襲う事になる。
「こ……これはっ……!?」
それは、自分の格好であった。学生服はどこへやら、今の自分は可愛らしい女物の洋服を着ているのである。
(何コレ…!?一体いつ着替えたの!?いや、誰が着替えさせたんだ!?)
普段から「男」として振る舞っているので、いざ女の格好をすると違和感があって恥ずかしい時がある。
思わず赤面する一方で、不満も露に呟いた。
「…まさか須王先輩や、馨や光が着替えさせたんじゃないよね」
だとしたら彼等を一層激しく軽蔑しなければならない。
しかし、この格好…
(どこかで見た事あるような……?)
水色のドレスに、端にフリルがひらひらと舞う、ホワイトのエプロン。
髪の後ろには、これまた可愛らしいリボンが結ってある。
どこかで見た事あるのだが、それが何だったのかがうまく思い出せない。
ハルヒは悩みながらも、ゆっくりと立ち上がった。 
とりあえずハルヒは、当てもなくとぼとぼと歩き出す。
今の季節は秋なのだが、この草原に生える草は新緑に恵まれおり、歩く度に柔らかい感触が足の裏から伝わってくる。
よく目を凝らしてみると、遠くに城のような建物が見える。
「とにかく、こうしていても仕方がない。あの建物の所へ行こう」

そうこうしながら歩いていると、どこからか可愛らしい声が聴こえてきた。
「遅れる〜〜!早くしないとぉ〜〜♪」
声を聴きながら、ハルヒが辺りを見回すと、遠くから誰かが走ってくる。
その人影は物凄い早さでハルヒの目の前まで近付くと、わずか1メートルの間合いでピタッと立ち止まった。
その人物を見て、ハルヒは驚愕する。
「は、ハニー先輩!!?」
そう、ハルヒの目の前に現れたのは、ハニーこと埴之塚光邦である。
しかし、その姿はいつもの桜蘭高校の制服ではなく、おしゃれなチョッキに蝶ネクタイ、ズボン、頭からはウサギの付け耳をつけた格好。
今の彼は、大好きな「うさちゃん」を具現化したような姿だった。
「せ、先輩!その格好は一体?」
「え?せんぱい?何のことぉ?僕は白ウサギのハニー。今開かれている【アリス女王・決定選手権】の第一監査員、兼、案内係なんだよぉ〜」
「えっ……?」
一体どういう意味なのだろう。ハルヒは目を丸くする。
白ウサギ・ハニーはきょとんとしながら、ハルヒに話しかけた。
「キミの名前は?アリス女王に候補するの?」
「な、何言ってるんですか先輩。ハルヒですよ!藤岡ハルヒ!!」
「じゃあハルちゃん、ハルちゃんは候補するの?」
「…あの、ハニー…先輩?これは、ホスト部の新手のイベントですか?」
「ホスト部?なにそれ〜〜?僕わからないよ〜?」
解らないのはコチラである。
それに、アリス…女王候補?理解不可能だ。
「女王候補も何も、この状況は一体…全くもって話の理解ができません!!」
泣き出したい心境で頭を抱えるハルヒ。
混乱も極度に達したかと思われたその時、ハルヒの頭の中に、幾つかのキーワードが浮かんだ。
(待てよ!?…この格好、ウサギのハニー先輩に、アリスの…女王候補…!?)
その瞬間、ハルヒの頭の中で1つの謎が解けた。
(そうか!これは『不思議の国のアリス』のお話なんだっ!!)

そう。今のハルヒの格好といい、ハニ−といい……ルイス・キャロルの有名童話『不思議の国のアリス』に登場する主人公・アリスそのものなのだ。
どうやらこの状況は、お話に沿った流れ(?)になっているようだが。
試しに、ハルヒは自分の方を思いきりつねってみる。……痛いだけだった。
(この状況は、夢じゃないのか!?ど、どうしよう……)
ハルヒは更に混乱する前に諦めた。
こうなれば、話のスジに従うのが無難だと悟ったからだ。
ハルヒは白ウサギ・ハニーに、先程の事を聞いてみる。
「あの〜ハニ−先輩(←頭の中でわかっていても、習慣からこう呼ぶ/笑)、先程いってた『アリス女王候補」について教えて下さりませんか?」
質問された白ウサギ・ハニーは、笑顔を浮かべて答えた。
「あのね、アリス女王っていうのはね、この世界を治めることができる女の子の称号なの!でね、もうすぐ現女王の就任期限が切れるから、新しく候補を集めて選ぶことになったのぉ。女王になれば、自分の好きな事も願いごとも何でも叶う特権があるから、女の子のほとんどがエントリーして激しく争うの。ねっ?凄いイベントでしょ!?」
「……確かに、それは大胆で凄いですね」
可愛らしい笑顔を満面に、ハードな内容を聞かせる白ウサギ・ハニーに、ハルヒは思わず苦笑いする。
「ハルちゃんもエントリーするの?」
「そ、それは……もちろん!」
勢いに任せて参加を申し出てしまったハルヒだが、ちゃんと計算をしていた。
理由はどうあれ、ここは「不思議の国」なのだ。
話のスジに従っていれば、この状況から脱出できる突破口が開くかも知れない。
(仕方ない。女王を目指せば、何とかなるだろう)
冷静に、ハルヒはそう考えた。流石に、へこたれない性格である。
「じゃあハルちゃん。これっv」
女王候補に入ると宣言したハルヒに、白ウサギ・ハニ−はあるものを渡した。
それは、スタンプカードであった。彼は遠くに見える城を指差した。
「ルールとしては“ハートのお城”へ一番早く入城したコが女王になれるんだ。でもその前に、チェックポイントでスタンプを押してもらってからじゃないと入れないからね。数は3つ。ハルちゃんもスタンプを集めてお城を目指してね」
「はい。ですが……どっちへ行けばいいのかサッパリなので」
「じゃあ、僕が途中まで案内してあげるぅ」
そういうや否や、ハルヒの手をしっかり掴むと、次の瞬間、彼は風と化した。
ハルヒの手を掴んだ白ウサギ・ハニ−は、草原をびゅんと走り抜ける。
文字通りの疾走に、ハルヒの体は宙に浮き、恐怖で顔が引きつる。
「……あぁっ、た、助け…○☆※□@〜〜!?(涙)」
ハルヒの叫びも空しく、草原の彼方に二つの人影は消えていった。

 白ウサギ・ハニーはハルヒを連れて草原を抜けると、森の中の小さな一軒家の前に辿り着いた。
息も絶え絶えに、地面に倒れるようにハルヒは膝をついた。
「はぁ…はぁ…。つ、着いたの…ですか?」
「うん!ここが第1チェックポイント!じゃあね〜v」
あれだけの疾走にもかかわらず、息1つ崩さない白ウサギ・ハニーは笑顔でそう告げると、再び先程と同じスピードでどこかへ走り去っていった。
「…ほ、本当に……常人離れしているなぁ」
何だか酷い言い方だが、ある意味で常識外の世界である。
疑問に幾つブチ当たる事があっても、気にしてはいけないのだろう。多分。

 ハルヒはようやく立ち直り、その一軒家を見た。
その一軒家はどちらかというと避暑地の別荘にある、ログハウスに似た造りの建物だった。
可愛い花が咲き乱れる花壇。芝生の上には大きなテーブルと幾つかの椅子が並べられている。
試しに、ハルヒは空いている椅子に座ってみる。
すると、自分の目の前にぼうっと、蜃気楼のように紅茶の入ったカップが現れた。
その前には一枚のメッセージカードが。
【DRINK ME(私をお飲みなさい)】
紅茶の入ったティーカップを前に、ハルヒは困惑する。
(確か、物語の中だと体が大きくなったり小さくなったりするんだよなぁ)
飲むべきか、このまま静かに立ち去ろうか悩んでいると、小屋の扉がきぃと音を立てて開いた。
中から、帽子を被った美少年が笑顔で現れた。
「いらっしゃいませ。お客人」
(あっ、鏡夜先輩だ)
声には出さなかったが、その人物はホスト部副部長の鳳鏡夜。
その容姿から彼は「帽子屋」のようである。
この世界では、自分の知っている人が、こうしていろんな役回り(?)で現れるようである。
ハルヒは改めて納得した。



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author : ユメサンゴさん

Comment
う、生まれて初めての小説です!
しかも、あのイラスト誕生の発端となった妄想を文章にしただけです(苦笑)。
おかしな表現ばかりですが、不思議な感覚を味わって下さい…。

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