颯爽とフェラーリに乗って現れた綾小路嬢もアリスの格好をしており、
どうやら自分と同じ【アリス女王 】候補の1人のようである。
(参ったなぁ。この人も現れるなんて) ハルヒは心の中で苦笑した。


不思議の国・狂想曲 後編


 アイドリングストップをしたままで、彼女はハルヒに向かって更 に喋り出す。
「あなたもアリス女王に候補しているようね?」
「はぁ、成りゆきで一応…」
「車や ヘリを使って移動しないなんて…余りに庶民じみた行動ね」
「とはいっても、自分は免許を持っていないの で当たり前だと思いますが?」
 ハルヒのツッコミに、綾小路嬢は目をひくつかせるが、また笑顔で話しか けた。
「…そ、そう?庶民は大変ねぇ。でもまぁ、その間に私はゴールしてしまうから別に
急がなくて もよくってよ?まぁ、あなたはチェックポイントすら通ってなさそうだし」
「いえ、その心配はないです。 もう2つ目のスタンプも押してもらったので」
「な、何ですってぇ!?」
声を荒らげて、綾小路嬢は運転 席から乗り出す。まるで信じられないといった表情で、
彼女はハルヒに詰問する。
「私はさっき帽子屋 さんに押してもらったばかりなのよ!これから2人目を探そうと
いうのに…。何であなただけ2つ目が押し てもらってあるの!?」
「え?だって帽子屋には…」
確か、帽子屋にはグリフォン・モリが未だお邪魔し ているはず。そう言おうとした
ハルヒは、帽子屋・鏡夜の言っていたルールを思い出して閉口する。
「 …いえ、何でもないです」
「じゃあどこにあるのよ!教えなさい!!」
「そ、それも言えないです!自力 で探すのがルールですから」
ハルヒは真面目な顔をして言うが、どのみち教えても帽子屋まで自分を送って くれた
グリフォンは、スタンプを持ったまま移動している。あの海辺へ辿り着いても空回り
するだけだ 。もっとも、彼自身が綾小路嬢にチェックポイントの番人だとすら告げる
ハズがないだろうが。
「くっ …」
悔しそうに言葉を失う綾小路。ハルヒはそんな彼女に別れを告げた。
「じゃあ、自分はこれで…」
ぺこりとお辞儀をして、とぼとぼと歩き出すハルヒ。
ところが、そんな彼女の態度に、綾小路嬢は逆上した 。
「あ、あんな庶民に先を越されたうえに、注意されるなんて……!許せないわ!!」
とぼとぼ歩いて行 くハルヒを睨み付けると、綾小路嬢は車のギアを入れ直して
ハルヒを後ろから轢こうと、猛スピードでフェ ラーリを発進させたのである。
「覚悟なさいっ!」
「っ!!!うそっ…!?」
車の接近に気付くハルヒ だったが、よけられない!もうダメかと思われたその時…
「うさちゃんキーック!」

ドガン!

可愛い声と重なって、激しい衝突音が響き渡る。
「きゃあぁぁ〜〜……」
次の瞬間、綾小路嬢の悲鳴と ともに、彼女を乗せた車は横にぐるぐる回転しながら、
空の彼方へと飛んで行った。ハルヒが目を開けると 、蹴りを放った姿勢で立ち尽くす
白ウサギ・ハニーの姿があった。
(は、ハニー先輩!?まさか、あの人 を車ごと蹴飛ばした!?)
いつになく、ワイルドでスポーティーなハニーを見て、ハルヒは言葉が出てこない 。
「もぅ!他の候補のコへの妨害行為は禁止なんだよっ。めっ!」
ぷんぷんしながら注意をする白ウサ ギ・ハニ−。しかし、注意される綾小路本人は、
車とともに、既に遠くへ消え去った後である。
「大丈 夫、ハルちゃん?」
「…ええ。自分は何とも無いです」
少なくとも、車ごと蹴り飛ばされたあの人が心 配なのだが、あえて言わない事にした。
「じゃあハルちゃん、頑張ってね〜♪」
こうしてハルヒを救っ た白ウサギ・ハニーは、先程と同じく超スピードで去っていった。


 ハルヒは気を取り直して歩き 出す。今まで出会った人物は、自分の私生活に関係する
人物ばかりだった。となれば、残るは環と双子。こ のどちらかがチェックポイントの
番人という事になるのだろうか。あれこれ考えながら歩いているうちに、 ハルヒは
いつの間にか草原を抜けて、お城の麓、綺麗な西洋風庭園の中に辿り着いていた。
こうしてみ るとハートの城は大きく、その麓の庭園もバラの花に彩られており、豪華な
雰囲気である。庭をあちこち歩 いているうちに、どこからか、女性達の歓喜の悲鳴が
聴こえてきた。すぐ近くのようだ。
「何があるん だろう?行ってみよう!」
バラの垣根のアーチを越えて進んでいくと、自分と同じ格好をした女性達(学校 では
ホスト部のお客様である女子生徒数人)が赤面し、きゃあきゃあと嬉しそうに騒いで
いる。その先 にはライブを行なうための豪華なステージが設置されており、舞台では
誰かがトークショーをしていた…
「あぁディー。誰も僕たちを見分ける事が出来ないね?」 (あ、光だ)
「そうだねダム。でも、僕たちの 仲が良すぎるんだ。なにせ……?」 (あ、馨だ)
「やめてくれよディー。それ以上は言っちゃあいけない …!」
お互い手を握りあって見つめあう双子。その姿に再び女性達が歓びの声をあげた。
その光景を終 止見ていたハルヒは、唖然とした様子で呟いた。
「あの二人、コチラでもこういう事をしているのか…」
確かに、クラスメイトの常陸院光(兄)と馨(兄)は双子としても有名で、部活では
それさえも利用した「 禁断の愛」を売りに活動している兄弟である。この物語で役に
例えるなら「トウィードルダム(光)&トウ ィードルディー(馨)」が相応しい。
「さぁ、お嬢様方。僕たちがどっちが誰か3回連続して当ててね」
「出来た方には、スタンプを差し上げるよ〜!」
 どうやら、彼等が最後のチェックポイントの番人らしい 。
(…こういう仕組みなんだ?良かった、複雑な条件じゃなくて)
ハルヒは人ごみをかいくぐって、人 ごみの前方へ出てくると、ダム・光がハルヒの
存在に気が付く。そして、いつものホスト部の接客のように 、二人は笑顔を浮かべ、
「おやお嬢さん。新しい人だね?僕はトウィードルダム」
「おやお嬢さん。新 しい人だね?僕はトウィードルディー」
ディー・馨が自己紹介を終えると、二人は別々にステージの奥にあ るカーテンの陰へ
隠れた。そして数秒後に再び現れ、同時にハルヒに質問をした。
『さぁ、“どっちが 「ダム」でしょうゲーム?”開始っ!!』
その問いに、ハルヒは間髪入れずに即答した。
「こっちがヒカ …じゃなくてダム。で、そっちがディー」
『ブーッ!ハズレでーす!!』
二人揃って、面白残念そうに不 正解を告げたが…やはりハルヒはハルヒだった。
「そんな事無いよ。やっぱりお互いに雰囲気とか違うから 」
ハルヒの答えの後、お互いに沈黙が広がる。が、やがて…
『……せ、正解』
双子は面を食らった 表情を浮かべ、周りにいた女性達はハルヒに拍手する。
「ちょ、ちょっと待っててね!次のゲームに進むか らっ!」
慌てた様子で双子は袖に隠れると、こそこそと対策を練る。
「あのコ、強敵だよダム!何で一 発で見分けられるんだ!?」
「落ち着けディー!今の解答は深くツッコまれたからだ。次は…」

数分 後、今度はコスプレよろしく、黒スーツ姿にサングラスをかけた双子が登場した。
その姿に、女性達はまた も歓喜の悲鳴をあげるが、ハルヒは騒がずに双子を見つめる。
「はいお嬢さん!2回戦だよ〜。僕がトウィ ードルダ…」
「違うよ。君はカオ…じゃなかった、ディーのほう。誤魔化そうとしてもダメ!」
『…い っ!?』
偽りをもってしても、いきなり見抜かれてしまったダム・光とディー・馨。
しかもハルヒに「お 客様を騙してはいけない」とまで注意を付け加えられ、硬直した。

やがて…

『お、おめでとう …ございます。ハルヒ選手』
結局、ハルヒは3回連続で正解をし、見事最後のスタンプを手に入れたのだっ た。
スタンプを揃えた事よりも、双子を最後まで見抜いたハルヒに、他の女性は拍手喝采。
「おめでと う!凄いわアナタ、ダム&ディーを見分けれるなんて」
「私は2回目までしか正解できなかったのよ。素敵 な眼力を持ってるのね〜」
その眼差しは、ホスト部にいる時と変わらない。あははと乾いた笑いを浮かべる ハルヒ。

だが。ここである疑問が浮かんだ。まだ登場していない部員がいたことに。
(となると、 須王先輩はどうなるんだ?まさか仲間外れってことは……)

そんな事を考えていると、ディー・馨がス テージから降りて、彼女の右手をとった。
「おめでとうございます。あなたはハートのお城へ入る権利を得 ました」
次に、ダム・光が反対の手をとって、深々とお辞儀をした。
「おめでとうございます。よって 、あなたをお城へ御案内します」
そう言い終えるや否や、あの豪華なステージがすぅっと消え去り、その後 にハートが
描かれた大きな門が現れた。ハルヒが驚く中、双子は揃えて告げた。
『さぁ城内へ!クリー ンオブハート・ハルヒ!!』


   最終章→
author : ユメサンゴさん

Comment
妄想小説も第3話になりました。ハルヒファンの皆様、
どうか綾小路嬢のご無体をお許し下さい(涙)。しかも
ハニ−最強だし(爆)。双子が登場しましたが、彼等の
得意ワザを文章表現するのは難しい事だと、改めて実感
しました…(――;)。
次回が最終章です…!(自分でも不安)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送